次亜塩素酸水(じあえんそさんすい)という名前が知られ始めたのは1990年代~2000年代前半でした。それから10数年経ち、今ではたくさんの人が使っている便利な商品です。
2000年代には一般の方の中でも特に意識・知識レベルの高い層にしか認知されていなかった次亜塩素酸水が、2013年の年末~2014年年始にかけてTVの影響で一般の方にも広く知られるようになりました。
それに伴い2014年頃から多くの企業がこの分野に進出した為、2016年現在は様々な商品が販売されています。その弊害としてミスリードを誘う記事も多く見受けられるようになってきたので、今回は次亜塩素酸水について取り上げてみたいと思います。
目次
次亜塩素酸水とは
【定 義】
本品は,塩酸又は塩化ナトリウム水溶液を電解することにより得られる,次亜塩素酸を主成分とする水溶液である。本品には,
・ 強酸性次亜塩素酸水(0.2%以下の塩化ナトリウム水溶液を有隔膜電解槽(隔膜で隔てられた陽極及び陰極により構成されたものをいう。)内で電解して,陽極側から得られる水溶液をいう。)
・ 弱酸性次亜塩素酸水(適切な濃度の塩化ナトリウム水溶液を有隔膜電解槽(隔膜で隔てられた陽極及び陰極により構成されたものをいう。)内で電解して、陽極側から得られる水溶液、または、陽極から得られる水溶液に陰極から得られる水溶液を加えてものをいう。)
・ 微酸性次亜塩素酸水(塩酸及び必要に応じ塩化ナトリウム水溶液を加え適切な濃度に調整した水溶液を無隔膜電解槽(隔膜で隔てられていない陽極及び陰極で構成されたものをいう。)内で電解して得られる水溶液をいう。)がある。
含 量
強酸性次亜塩素酸水 本品は,有効塩素 20~60mg/kg を含む。
弱酸性次亜塩素酸水 本品は,有効塩素 10~60mg/kg を含む。
微酸性次亜塩素酸水 本品は,有効塩素 10~80mg/kg を含む。
上の引用は平成14年6月に食品添加物として指定された次亜塩素酸水の厚生労働省による定義です。非常に長い引用分ですので無理に読まなくても大丈夫です。
食品添加物とは
余談ですが、食品添加物とは保存料、甘味料、着色料、香料等、食品の製造過程または食品の加工・保存の目的で使用されるものの事です。
食品添加物は体に悪いものの代名詞のように扱われていますがJECFAの算出するADI(一日摂取許容量)以下であれば健康へ影響を与えないといわれています。
しかしなから当然体に良いものではなく、健康に重大な悪影響を与える可能性もある為、厚生労働省によって成分の規格や使用の基準が厳しく定められています。未だに『厚生労働省が指定する食品添加物=安全なもの』と勘違いしている人は注意してください。
下に食品添加物リストのリンクを貼っています。こんなものも食品添加物なのかと驚くかもしれません(アンモニア、過酸化水素、2-メチルブタノールなど)。
話を元に戻します。では現在皆さんが現在使用している、もしくはこれから購入を検討している商品は『次亜塩素酸水』なのでしょうか?
答えは『ほとんどが次亜塩素酸水ではない』そして『ほとんどが次亜塩素酸水である』です。なぞなぞのような答えですがこれから解説していきます。
食品添加物としての次亜塩素酸水
厚生労働省が指定する食品添加物としての次亜塩素酸水の範囲は非常に狭く、実際認められているのはごくごく一部です。それでは例を挙げてみましょう。
◆森永乳業-ピュアスターシリーズ
非常に有名な企業である森永乳業株式会社が販売するピュアスターシリーズです。
例えばピュアスターミュークリーン2は次亜塩素酸濃度10~30ppm、ph5.0~6.5であり、厚生労働省が指定する食品添加物としての『微酸性次亜塩素酸水』に該当し、商品説明においても『食品添加物「微酸性次亜塩素酸水」適合』と記載されています。
>>ピュアスターミュークリーン2-森永乳業株式会社
◆ホシザキ-電解水生成装置WOXシリーズ
こちらも飲食業に携わる人なら皆が知っている有名企業ホシザキ株式会社のWOXシリーズです。
WOX40WAは次亜塩素酸濃度10~60ppm、ph5.0以下となりますので、こちらも厚生労働省が指定する『弱酸性次亜塩素酸水』に該当します。森永乳業と同じく商品説明に適合の旨記載されています。
>>電解水生成装置-WOX40WA(-R)-ホシザキ株式会社
その他、東芝等も食品添加物としての次亜塩素酸水生成装置を販売しています。
あれ?と思われた方が多いと思います。「わたしの使っている〇〇ウォーターは?」「いつも買っている〇〇〇〇は次亜塩素酸水では?」と疑問に思っているのではないでしょうか。
よくミスリードを誘う記事に書いてあるのが、『製造方法による違いによってのみ食品添加物として認められているかどうか』という事です。
現在の次亜塩素酸水の製造方法は大きく分けて2つ、1つは『次亜塩素酸ナトリウムとph調整剤(塩酸、酢酸、炭酸ガス等)を混合する方法』、そしてもう1つは『電解方式(塩酸や塩化ナトリウム水溶液を電気分解して作る方法)』です(その他にもこれらの技術をベースに応用しているものもあり)。
『電解方式』の商品を売りたい(宣伝したい)記事には「厚生労働省は後者のみを食品添加物として認めている」と書き、安全な次亜塩素酸水とは『電解方式』であるという事を執拗にアピールしながらパッキングされた液体商品に誘導するものが多いです。
これは半分は正解であり、半分は間違いです。
まず、確かに『厚生労働省が食品添加物として認めた次亜塩素酸水』は電解方式です。しかしながら、電解方式で作られた次亜塩素酸水でもパッキングされて例えばph6前後で90ppm~の濃度で売られているものは食品添加物として厚生労働省が認めた次亜塩素酸水ではありません。
なぜならph6前後の『微酸性次亜塩素酸水』の濃度規定は10~80ppmと定められており、濃度規定をオーバーするからです。
例えば200ppmの商品でも家庭で薄めて80ppm以内にすれば食品添加物になると無知な人は考えがちですが、食品添加物の規定とはそんな曖昧なものではありません。食品添加物は人体への悪影響が考えられるからこそ厳しい規定になっているのです。
なお、「次亜塩素酸水」については、添加物そのものではなく生成装置が主として流通することになることから、成分規格に適合する次亜塩素酸水が生成されることを担保するため、基原物質や隔膜の有無等についても成分規格内で特定しようとするものです。
酸性電解水に関するパブリックコメント平成14年4月-厚生労働省医薬局食品保健部基準課見解より
さらに、上の引用のとおり厚生労働省は電解水生成装置の設置を前提とした指定が想定される為(現在のようにパッキングされた商品が流通するのは想定していない)、例えパッキング時の濃度が80ppm以内であろうとも食品添加物として認めるかは不明です。
わたしが『ほとんどが次亜塩素酸水ではない』と最初に書いたのは『ほとんどの商品は厚生労働省の指定する食品添加物としての次亜塩素酸水ではない』という意味でした。
実際、食品添加物として指定された次亜塩素酸水は森永乳業やホシザキ、東芝等の電解水生成装置から生成されたパッキングされていないもの、もしくは議論の余地はありますがパッキングされていても規定の濃度(弱酸性なら10~60ppm、微酸性なら10~80ppm)を満たしたもののみですので、現在販売されているほとんどの商品は厚生労働省の指定する食品添加物としての次亜塩素酸水ではありません。
そもそも食品添加物と認められる製品を作るには、大前提として都道府県知事から『添加物製造業許可』を受けた事業所でなくてはならないのですが、わたしが見た限りではパッキングされた商品を販売している店で添加物製造業を受けた事業所は見当たりません。
長々と説明しましたが、食品添加物としての次亜塩素酸水の現状はこのようになっています。
食品添加物として指定された次亜塩素酸水が欲しい人は上に森永乳業とホシザキのページへ飛べるようにリンクしているので詳細はそちらで見てください。
ただ、生成装置は数十万~数百万するものも多く一般家庭や小規模な事業所では手に余ります。
そこで登場するのが、10年以上小口のニーズを満たしてきたパッキング商品の出番です。ここからは『食品添加物ではない次亜塩素酸水』(ほぼ全てのパッキングされた次亜塩素酸水)の説明となります。