子供のインフルエンザ集団感染が防ぎにくい理由

学校の教室

一昔前とは異なり、現在は一般の人でもインターネットを通して様々な医療情報を調べる事ができます。

そして、特に子供やお年寄りがいる家庭では感染予防に力を入れており、専門家顔負けの知識を持っている人も多いかと思います。

しかしながら、毎年幼稚園や小学校で起こるインフルエンザの集団感染をなかなか減らす事ができていません。

なぜ子供のインフルエンザ集団感染は防ぎにくいのかについて調べてみました。

インフルエンザ集団感染数は増えたり減ったり

都内学校等におけるインフルエンザ様疾患による臨時休業の状況推移
東京都感染症情報センターデータよりグラフ作成

上のグラフは東京都内の学校でインフルエンザ様疾患(悪寒、発熱、頭痛などインフルエンザ様の症状を示す疾患)によって臨時休業を行った施設数を表しています。

2009-2010年は新型インフルエンザが国内で初めて確認された年であり、異常数値を示していますが、それ以降は上下はあるものの中央値はほぼ一定となっています。

これだけ予防の重要性が叫ばれ、家庭単位でも感染予防の三原則を守って、手洗いの励行、飛沫感染を防ぐ為のマスク着用(感染拡大を防ぐ)、湿度・温度対策、ウイルスの除菌対策などがしっかり行われているにも関わらずなぜ集団感染はなかなか減らないのでしょうか。

もちろん世の中には感染予防意識の高い人と低い人がいるという事が一番の問題ではありますが、今回はそれ以外について考えてみます。

大人と子供のウイルス排出期間の違い

2006年に発表されたNon-pharmaceutical interventions for pandemic influenza, international measuresという論文に面白い事が書いてありました。

Compared with adults, children can shed virus earlier before illness begins and for longer periods once illness starts. As in adults, peak shedding in children occurs during the first 1–3 days of illness, but absolute levels may be higher than those in adults. In 1 report, at least 4 illnesses (8% of the total) in children were associated with presymptomatic shedding that began 6, 4, 3, and 3 days, respectively, before illness onset (5). The median duration of virus detection is typically 7–8 days after illness onset, but shedding for up to 21 days has been recorded. In 1 study, virus was shed by 10% of children on days 8–11, by 5% on days 12–15, and by 0% on days 16–19 (6). Infants with infection requiring hospitalization may shed virus longer.
Non-pharmaceutical interventions for pandemic influenza, international measuresより引用

簡単に訳すと「大人に対して子供のウイルス排出は早期に始まりその期間は長期に渡る。排出のピーク自体は24-72時間で大人とあまり変わらないがウイルスの排出は通常発症後7-8日続き、21日続いた例もある」というような意味合いです。

通常健康な大人では発症後24-48時間前からウイルスが検出され、排出量のピークは発症後24-72時間後、そして排出は発症後5日まで続くといわれており、ウイルス排出パターンのメタ解析(複数の研究結果を統合してより高い見地から分析する事)でも平均排出期間は4.8日でした。

学校保健安全法でも、インフルエンザの出席停止期間について「発症後5日経過、かつ解熱後2日(幼児は3日)を経過するまで」と定められています。

しかし、この論文を考慮すると法で定められた出席停止期間では短いかもしれません。

出席停止期間後、他人に病気をうつす心配はないと登校したが実際はまだウイルスを排出していて感染を広げてしまうという事は十分にありえます。

今後、法改正があり出席停止期間が長くなるという事は考えにくいのでどうにもできない事ではありますが「大人と子供のウイルス排出期間は違う」という事が子供の集団感染を防ぐのを困難にしている1つの要因かもしれません。

インフルエンザワクチン接種率と学級閉鎖の関連性

最後に、蛇足ながらインフルエンザの集団感染を防ぐ方法について調べている時に興味深い論文を見つけたので紹介します。

慶応大学が発表した「インフルエンザワクチン接種率と学級閉鎖の関連性」についての研究です。

インフルエンザワクチン接種率と学級閉鎖の関連性
Influenza Vaccination of Schoolchildren and Influenza Outbreaks in a Schoolより表作成

表のとおり、ワクチン接種率が高ければ平均学級閉鎖日数は減り、接種率が低ければ学級閉鎖日数は増えるという研究結果です。

現在の日本のインフルエンザワクチン接種率は50%程度ですが、かつて小中学校でワクチンの集団接種が義務付けられていた時代がありました。人権や副作用などの問題で予防接種法改正の折に「任意接種」となり今に至っています。

インフルエンザワクチン接種が是が非かについては難しい問題です。

しかし、施設サンプル数の少なさや時代背景の違いを考慮しても関連性があるのは間違いないでしょう。

以上、長くなってしまいましたが今回はインフルエンザの集団感染を防ぐのが難しい理由について論文を交えて書いてみました。何かの役に立てていただければ幸いです。

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