2013年現在、空気清浄機は一家に一台存在するといっても過言ではないほど普及しています。
花粉症対策、悪臭対策、PM2.5対策、感染予防対策など購入目的はさまざまだと思いますが、風邪やインフルエンザの感染予防効果を期待して購入した人も多いのではないでしょうか。
では、この空気清浄機には本当に感染予防効果はあるのでしょうか。その疑問に答える材料のひとつとして国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンターの西村秀一氏らの研究があげられます。
実験の結果、まずプラズマクラスターイオン発生機では、活性ウイルス量の推移は、コントロールの経時的自然減衰、すなわち何もしない状態のウイルス量変化と変わらなかった。
一方、ナノイー発生器の場合は、コントロールの自然減衰に比べ、ウイルス量の有意な低下が見られた。また、ストリーマ放電装置付き空気清浄機では、自然減衰より大幅な低下が見られた。ただし、ストリーマ放電装置付き空気清浄機の場合は、放電装置を取り外してフィルターのみの状態で検討した結果と変わらなかった。
日経メディカルオンライン新規電気製品の浮遊ウイルス除去効果、HEPAフィルター装着空気清浄機に遠く及ばずより
プラズマクラスター(シャープ)、ナノイー(パナソニック)、光速ストリーマ(ダイキン)などのウイルス除去効果のある技術を各社が発表していますが、それらの効果を証明する実験空間が1㎥などと実際の生活空間を代表していない事から、実生活空間に近い大容積でかつ内部の温湿度制御可能な施設を使った実験を行う事になったようです。
実験の結果ですが、プラズマクラスターに関しては効果なし、ナノイーは多少なりとも効果あり、光速ストリーマは効果なしという事だったようです。
ただし、この研究はHEPAフィルターの優位性を示したいという事に重点を置いているような気もするので、100%信用するのはどうだろうという感じもします。
[note]HEPAフィルターは、家電では空気清浄機に搭載されている事が多く直径0.0003mmの微細粒子を99.97%キャッチできる高性能のフィルターで、MEPA<HEPA<ULPAの順に性能が高くなります。空気清浄機の場合、フィルターの優劣は重要ですが、HEPAフィルターを搭載していても風量やセンサーの有無によって性能は変わります。[/note]
この実験からHEPAフィルターを搭載する事によって浮遊ウイルスを大幅に除去できるという事は分かりました。それならばHEPAフィルターを搭載した空気清浄機ならインフルエンザの感染予防に効果はあるという事になるのでしょうか。
本疾患の感染経路は、季節性インフルエンザと同様に飛沫感染が主体で、一部は接触感染と考えられる。空気感染を積極的に示唆するエビデンスはないが、季節性インフルエンザと同様に、限られた状況では空気感染をきたす可能性が否定できない。
上の引用は国立感染症研究所の新型インフルエンザ感染対策ですが、インフルエンザの主要な感染経路は飛沫感染および接触感染と書いてあります。
空気感染は限られた状況(密室などでウイルスが濃密になった場合やウイルス自体が更なる変質をした場合など)での可能性はあるものの基本的にはそこまで心配する必要はないようです。
となると、浮遊ウイルスをHEPAフィルターで除去する事による感染予防効果に疑問が生まれます。それよりは手で触れる可能性があるドアやテーブルに付着したウイルスを消毒、除菌する事の方が意味があるような気がします。付着したウイルスは空気清浄機では吸い込めないですよね。
プラズマクラスターは付着したウイルスにも効果があると謳っていますが、上の実験結果によると生活空間では浮遊ウイルスにすら効果がないと発表されています。実験結果を見るとどこの商品も付着ウイルスには効果がなさそうですね(ナノイーは多少効果があるかもしれませんが)。
昔、三洋電気がウイルスウォッシャーという機能のついた空気清浄機を販売していたのですが、あの空気清浄機だけは理論上浮遊・付着の両方ともに効果があっただろうと思います。パナソニックはナノイー推しなのでこれから再び販売される事はないでしょうが素晴らしい技術だったと思います。
[note]最近パナソニックから次亜塩素酸空間除菌脱臭機ジアイーノという空気清浄機が販売されましたが、あれは基本的にはウイルスウォッシャーと同じ次亜塩素酸の力でウイルスを除菌する仕組みです。
ただし、価格はウイルスウォッシャー(ウイルスウォッシャーは1万円台で購入できた)と比べものにならないくらい高く、金額面を考えるとあまりおすすめできる製品ではありません。[/note]
空気清浄機自体に感染予防効果があるとは思いませんが、加湿機能付きの空気清浄機なら湿度をあげる事でインフルエンザウイルスの生存率を下げる事ができるので効果はあるでしょう。
ただし、加湿機能付きの空気清浄機は気化式の加湿器をベースにしているので加湿能力はそれほど高くありませんし、たくさんの機能がついた物は一部分壊れると全て駄目になってしまう可能性もありますので個人的には加湿は加湿器に任せるのがベストだと思います。
>>【加湿器は感染予防に効果大】種類別のメリットとデメリット
空気清浄機は花粉症やPM2.5、消臭対策などには有効だと思います。しかし、感染予防に関しては手洗いやマスク、消毒・除菌対策の方が効果的だと思いますのであまり過信しないようにしましょう。