冬季に大流行し感染性胃腸炎を引き起こすノロウイルス。数多くのサイトで予防の方法などが紹介されていますが、間違った情報も多く存在しますので(特に自社商品の売り込みを兼ねているサイトなど)正しいノロウイルスの予防と、もし感染してしまった時にはどうすればよいのかを書いていきたいと思います。
食べ物を介しての感染予防
ノロウイルスの感染経路は大まかに①飲食物からの感染(感染型食中毒)と②ノロウイルスに感染したヒトからヒトへの感染に分けられます。
まずは①飲食物からの感染に対する予防方法ですが、ノロウイルスによる食中毒はカキやアサリなどのような二枚貝が原因と長い間言われてきました(理由としてはカキを生で食べるのは冬場が多い事や比較的高い確率でカキからウイルスが検出された事など)。
ただし、調理時などに手に付着したウイルスが他の飲食物にも付着する為に、あらゆるものから感染する可能性があるようなので注意が必要です。
ノロウイルス属(ノーウォークウイルス種)感染症の原因食材がカキと特定される割合は年々低下しており、2006年後半にはカキが食材と特定された集団食中毒は発生しなかった。疫学的な知見からは、カキ以外の食材、たとえば最近では外国産の漬物の一部、[10]あるいは直接・間接的なウイルスへの接触による、原因の特定しづらい感染経路が圧倒的であると考えられる。
ノロウイルス-Wikipediaより引用
①調理従事者は、下痢、吐き気、嘔吐、腹痛、発熱などの症状が現れた時は、絶対に調理行為に携わらないようにしましょう。
②調理の前と後は必ず流水・石鹸(液体石鹸推奨)による手洗い(正しい手洗い)をしっかりと行いましょう。石鹸でノロウイルスを死滅する事はできませんがウイルスを洗い流す事ができるので、手洗いは最も効果的な感染予防方法です。
③貝類(内臓を含んだまま)で加熱調理する際には中心部まで十分に加熱(85℃以上で1分以上)して調理し、貝類を調理したまな板や包丁はすぐに消毒しましょう。
野菜や果物などの生鮮食品は丁寧に、そして十分に洗浄しましょう。
④食事を配膳する際にも手洗いをするようにしましょう。特に自分が下痢や吐き気がある場合は必ず行いましょう。
ヒトからヒトへの感染予防
食べ物を介しての感染以上に気をつける必要があるのがこのヒトからヒトへの感染です。
最近の疫学調査の結果、従来主因となってきた二枚貝の生食によるノロウイルスの食中毒は減少し、ヒトからヒトへのいわゆるヒト—ヒト感染が大きな割合を占めることも明らかになってきた。
国立感染症研究所HPより引用
英国の公衆衛生検査サービスの調査ではノロウイルスによると確定している集団発生事例1877件の内、ヒトからヒトへの感染によるものが85%だったという報告もあります(横浜市衛生研究所HPから)。
ノロウイルスは経口感染、接触感染、飛沫感染、空気感染(塵埃感染)という多様な感染経路をとり、さらに100個以下の少ない量でも感染が成立する強い感染力を持つ為、ヒトからヒトへの感染を予防する事はとても困難です。
①食べ物を介しての感染同様、感染予防に最も効果があるのは正しい手洗いです。
②感染者の糞便や嘔吐物は必ず正しい方法(a~f)で処理しましょう。
a.糞便や嘔吐物を処理する人以外の人は近づかない
処理の際に吸い込むと感染してしまうおそれのある飛沫が発生します。少なくとも他の人は3m以上離れてください。
b.マスク、手袋、眼鏡もしくはゴーグルを装着し速やかに処理する
糞便や嘔吐物を処理する際は必ずマスク(通常の物で構いません)、手袋、眼鏡(可能であればゴーグル)を正しく装着し、感染が広がらないようにできるだけ速やかに処理しましょう。
c.糞便や嘔吐物をふき取った雑巾やタオルはビニール袋に入れて密封し、廃棄する
二次感染を予防する為にもウイルスが付着した雑巾やタオルは廃棄しましょう。
d.塩素系消毒剤もしくは熱湯(85℃以上で1分以上)で周囲を広めに消毒する
消毒時にはピューラックスやミルトンなどのような次亜塩素酸ナトリウムを正しい濃度に希釈し使用してください。次亜塩素酸水や二酸化塩素なども効果はありますが、感染者が発生している状況では次亜塩素酸ナトリウムの使用をおすすめします。
推奨されている濃度は1000ppmですので、6%ピューラックスを60倍希釈してください。60倍希釈にするには水1Lに対してピューラックスを17mLです。
e.糞便や嘔吐物が付着した衣類はその他の衣類とは別に洗う事
糞便や嘔吐物が付着した衣類は大きな感染源となりますのでその他の衣類とは別に洗いましょう。
さらに、そのまま洗うと洗濯槽も汚染される可能性がありますので、汚染された衣類はマスクと手袋をした上でバケツやたらいなどでまず水洗いし、更に塩素系消毒剤(200ppm以上)で消毒する事をおすすめします。
f.ノロウイルスがカーペットなどに付着している可能性もあるので注意する事
ノロウイルスがカーペットや畳などに残っている場合、それらが乾燥し空気中に舞い上がる事で塵埃感染を起こす可能性があります。この塵埃感染はとても恐ろしく、ホテルなどでは毎年のように集団感染を起こしています。
12日以上前にノロウイルスに汚染されたカーペットを通じて、感染が起きた事例も知られており、時間が経っても、患者の吐ぶつ、ふん便やそれらにより汚染された床や手袋などには、感染力のあるウイルスが残っている可能性があります。
カーペットなどに次亜塩素酸ナトリウムを使用すると激しく痛めてしまう可能性があるのでスチームアイロンを使用してもいいでしょう。
東京都健康安全センター資料より