洪水・土砂崩れ等の災害時に必要な衛生管理と対策

がれき撤去作業時の注意事項

災害地域でのがれきやゴミ、汚泥などの撤去時には怪我や破傷風に十分注意する必要があります。

1.破傷風とは

破傷風は破傷風菌が作り出す破傷風毒素という神経毒素によって引き起こされる病気です。

破傷風菌は土壌の中に常在し傷口などから体内に侵入し、感染部位で発芽・増殖します。

症状は痙笑や開口障害、嚥下困難などの局所からはじまり、全身(呼吸困難など)に移行し(1期~4期と段階を経て悪化)致命率約30%の非常におそろしい感染症です。

数百人、数千人が罹患するということは考えにくいですが、年間数十件は発生しており、東日本大震災時にも50歳以上の方が数人感染しており、被災地では感染対策が必須の感染症です。

2.破傷風ワクチン

破傷風ワクチンの接種によって100%近い人が十分な抗体を獲得することができます(免疫は約10年持続)。

前回摂取から10年以上経っていても、3種混合ワクチン(ジフテリア・破傷風・百日咳)を受けている人なら追加摂取(1回のみ)で抗体を得る事ができます。

現地の方や災害支援などに行かれるボランティアの方は早めのワクチン接種をおすすめします。

接種料金は3000円程度です。

3.怪我防止

破傷風は傷口から体内にはいることが多いので怪我には注意してください。

・素肌を露出しない長袖・長ズボンで作業を行いましょう。

・丈夫な手袋、長靴、安全靴などを着用し、水や土、汚染されたものを直接素手で触ったり、鋭利なもの(釘など)で足を怪我しないように体を保護しましょう。

・作業が終了したら必ず石鹸と流水でよく手を洗いましょう。手洗い用の水が無い場合はウェットティッシュなどで汚れを落とした後にアルコール手指消毒薬で消毒しましょう。

>ウエルパス手指消毒液0.2%-手指消毒液-

・作業中に負傷した場合で、傷口が化膿したり破傷風を疑う症状が見られた場合は速やかに医療機関を受診してください。

潜伏期間があるので症状が起こるまでに3日~3週間程度かかります。初期症状で分かりやすいのは開口障害(あごがこわばり口が開きにくくなる)、嚥下困難(ものを飲み込みにくくなる)です。

避難所での感染予防

避難所での感染予防対策も基本的には家庭と同じですが、避難所には家族だけではなくたくさんの人々がいます。

自分たちだけが予防意識を持っていても、全員が同じように感染症に注意しているわけではないので、その部分も考慮した感染予防対策が必要になります。

予防意識が低い人には皆で一緒に感染予防すれば感染率が大幅に下がることを教えてあげてください。

大規模災害であれば様々な研修や訓練を受けたDHEAT(ディーヒート:災害時健康危機管理支援チーム)の出動も考えられます。

>災害時健康危機管理支援チームについて|厚生労働省

避難所にDHEATのような衛生管理のプロフェッショナルがいればそれに従い、いなければ医療従事者や避難所代表者に相談しましょう。

基本的な予防

・食中毒対策は避難所での感染予防の基本です。食事は可能な限り加熱したものをとり、作ってから長時間経過(目安は2時間以内※3)したものは食べないようにしてください。

・安心して飲める衛生的な水だけをきれいなコップで飲みましょう。

・食事の前、用便の後には必ず手を洗いましょう。

・おむつは所定の場所に捨て、その後はよく手を洗いましょう。


※3 医療施設や児童施設でも調理後2時間以内の食事を目安にしている

この考えの基本になっているのはサルモネラや一般生菌の増殖数データであり、2時間を経過した時から食品中細菌の増殖は活発になる

病気の症状が確認されたら

・咳が出ている時は周りに飛ばさないように必ずマスクを着用しましょう。

・発熱、のどの痛み、咳、嘔吐、下痢などの症状ある場合は我慢せずに速やかに医療従事者や避難所の代表の方に相談しましょう。

・熱や咳が出ている人を介護している人もマスクを着用しましょう。

・高齢者は特に肺炎には注意が必要です。酷い咳や黄色い痰、息苦しさ、呼吸がしにくいなどの症状が出た時は肺炎の可能性があるので速やかに医療従事者や代表の方に相談しましょう。


その他、避難所で注意が必要なのは熱中症です。

家と避難所では環境が違うので、自分では気づかない内に熱中症にかかっている可能性があります(特に温度の差を感じにくい高齢者は注意)。

のどの渇きを感じなくても水分、塩分の補給に注意して熱中症にならないようにしてください。

【簡単な脱水症状チェック】
1.手の親指の爪を少し強めにつまむ
2.つまんだ指を離した時に親指の爪は白くなってるが、その指の色がもとの色(ピンク)に戻るのに3秒以上かかれば、体が脱水状態の可能性がある
その他には手の甲をつまんで離した時、盛り上がった皮膚がすぐに戻らなければ脱水状態の可能性がある。

>温度が低くても湿度の高い日は熱中症に要注意

>経口補水液OS-1-脱水対策-

避難所のトイレ清掃のポイント

家庭とは違い避難所のトイレは不特定多数の人が利用します。

トイレ清掃係の方のためにトイレ掃除のポイントをまとめましたので確認してください。

・マスクと使い捨てのゴム手袋(厚手のもの)を着用しましょう。

・トイレのドアや窓を開け、トイレ内の風通しをよくします。

・箒で床を掃き、ゴミを片付けます。

・消毒・除菌剤を作ります。金銭的に余裕があったり、手に入る環境ならピューラックスを、無理ならハイターを使いましょう。

希釈後は時間の経過とともに効果が落ちていくので、作り置きはせずにその日に必要な分を作りましょう。

ハイターの希釈の目安は5Lバケツにキャップ4杯です。

・ドアノブ、手すり、レバー、タンク、便座などを先に拭き(便器とそれ以外は布を分けること)、その後床を消毒しましょう。

上記の消毒剤(次亜塩素酸ナトリウム)を使う場合は金属腐食性が高いので金属部分はしっかり水拭きしてください。

スプレーなどでの噴霧は失明や呼吸困難を起こす可能性があるので絶対やめてください。

・便器の内側はトイレ用の薬剤(トイレハイター、ドメスト、サンポールなど)を原液でかけ、数分こすらずに置いた後で流しましょう。

汚れなどが付着している場合はタワシなどで落としてください。

・全ての清掃が完了したら手袋、マスクを外し、しっかりと手洗いしてください。

水道が復旧していない場合は速乾性の手指消毒アルコール剤を使用しましょう。


以上、水害時の清掃方法、消毒除菌対策など基本的な衛生管理について書いてみました。

あくまで基本的なものなので、個別具体的な対策については臨機応変に行っていただければと思います。

災害はいつ自分の身に降りかかるか分からないので、今回紹介した知識を頭の片隅に置いてもらえれば幸いです。

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