アルコール除菌・消毒剤の使い方と注意点

アルコール除菌、消毒剤の使い方と注意点

アルコール除菌・消毒剤はさまざまなウイルスや細菌に効果があり、手に入りやすい事から一般家庭や飲食店でポピュラーに使用されています。

しかし、正しい使用方法で除菌や消毒を行わないと効果がなかったり、薬剤に対する抵抗力が強い一部のウイルスや細菌には効果が低い事を覚えておく必要があります。

アルコール消毒剤とは

 

アルコールとはエタノール(エチルアルコール)やメタノール(メチルアルコール)、イソパノール(イソプロピルアルコール)などの総称です。

その中でも消毒用に使われるアルコールはヒトへの毒性が相対的に低いエタノールとイソプロパノールで、消毒用エタノールとイソプロパノールは日本薬局方(医薬品の性状及び品質の適正を図るため、薬事法第41条に基づき薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて厚生労働大臣が定め公示する医薬品の規格基準書)で規定されています。

>>日本薬局方 消毒用エタノール Ethanol for Disinfection

>>日本薬局方 イソプロパノール ISOPROPANOL

エタノールの大部分はアルコール発酵(グルコース、フルクトース、ショ糖などの糖を分解して、エタノールと二酸化炭素を生成し、エネルギーを得る代謝プロセス:糖蜜やさとうきびなどの糖質と、トウモロコシ、さつまいも、じゃがいもなどのでんぷん質が原料)によって製造されており(主成分は発酵アルコールなので安全などと表記している製造者もいるがエタノールの事なので優位性はない)、イソプロパノールより幾分毒性が低いと言われています。

補足

日本では、純粋なエタノールに対して酒税法によって課税される為コストが上がってしまいます。税金を軽減する為にエタノールに第二級アルコールの一種である2-プロパノールを添加したり(飲用に転用できないように不適な臭気や味を加える)、2-プロパノールやベンザルコニウム塩化物などとの合剤にした製品もあります。

アルコール除菌や消毒の仕組み

 

アルコール剤を有効な濃度で使用すると細菌などのタンパク質を変性(タンパク質の高次構造が不可逆的な変化を起こして活性を失ったり不溶性になったりする現象)させたり溶菌(細菌の細胞が細胞壁の崩壊を伴って破壊され、死滅する現象)などの殺菌作用をあらわします。

さらにある程度水が存在する状況ではアルコールが細胞膜を変性すると共に透過したアルコールが菌の内圧を高めて溶菌などの作用をあらわし、高濃度で使用するとタンパク質の構造水などの脱水作用が生じる事で変性作用が強く現れます。

したがって、アルコールと水分のバランスが良い70~80%の濃度が最も殺菌効果が高いと報告されています。最適濃度については諸説あり、濃度が70%の時にアルコールと水の分子組成が1:1となる事で疎水基が平面上に並んで広い疎水面を作り、細胞膜を破壊してタンパク質を溶出させるので殺菌効果を示すという新しい解釈もあります。

>>アルコールの殺菌効果は何パーセントが良いか-有限会社協和商会(http://www.kws.jp/news/new_skin-28.html)

リンク先消滅につきキャッシュより下記に引用

アルコールの何パーセントが消毒によいか
日本薬局方の消毒用エタノールの濃度は76.7〜81.1V/V%となっている。Price(1950)は10〜20%では10分間以上作用させないと殺菌効果がなく、60〜90%では最初の数秒間で強力な殺菌力を発揮するが、90%以上ではかえって殺菌作用が弱くなることを実験で確かめている。Morton(1950)のブドウ球菌に対するエタノール濃度(水分量)と殺菌効果の成績からも60〜90%が効果的であることが証明されており、エタノール、プロパノール等のアルコール類では、無水のものより適量の水分を含有したほうが有効であるとする説が相当多い。Luthi(1954)は70〜90%のエタノールの抗カビ性を調査した結果、Penicillium tardumの胞子に対して90%濃度が最適効果があったと報じている。
Block(1977)はエタノールの至適濃度は70V/V%であり、この濃度は細胞に対する透過性が大で、細胞のタンパク変性を生じやすいと称している。高島ら(1980)はエタノールの至適濃度を70%程度と認めながら、カビの種類によってはそれ以下でも有効なことを確認している。

各濃度のエタノール作用時の菌の生存率

アルコール剤の効果が期待できないケース

 

アルコール剤は有効なウイルスや細菌に使用し、なおかつ適した条件で使用する事で効果を発揮します。
逆に言えば効果が期待できないウイルスや細菌に使用したり、不適な条件で使用すると効果が期待できないという事になります。

本品は、使用濃度において栄養型細菌(グラム陽性菌、グラム陰性菌)、酵母菌、ウイルスなどには有効であるが、芽胞(炭疽菌、破傷風菌など)及び一部のウイルスに対する殺菌効果は期待できない

消毒用エタノール 日本薬局方より引用

アルコール剤の効果がない細菌は芽胞(一部の細菌が形成する極めて耐久性の高い細胞構造)を形成する細菌であり、炭疽菌や破傷風菌の他、食中毒の原因になるセレウス菌やボツリヌス菌、ウェルシュ菌などが有名です(その他、枯草菌や納豆菌など)。

効果が薄いウイルスとしてはエンベロープ(約80%ウイルスが持つ膜状の構造で、熱や薬剤によって容易に破壊される)を有しないノロウイルスやロタウイルス、手足口病やヘルパンギーナを引き起こすエンテロウイルス。アデノウイルス感染症を引き起こすアデノウイルスなどが有名です。

>>ノロウイルスの一般常識~アルコール消毒が効かないはなぜ?~

これらの細菌やウイルスは薬剤に対する抵抗力が非常に強い為にアルコールでの除菌や消毒の効果は期待できません。

アルコール(濃度を問わず)に緑茶抽出物(カテキンなど)や果物エキスを添加する事で死滅可能と説明している所もありますが生活環境下なおかつ短時間(数時間かければある程度は不活化できるかもしれないが)では難しいでしょう。

これらは基本的な知識であり、少しずつ認知されてきていますがまだまだ知らない人も多いので注意が必要です。

次にせっかくのアルコール剤の効果を薄めてしまう使い方として濡れている状態の物に使用する事が挙げられます。

アルコールは細菌やウイルスに有効な濃度の幅が非常に狭い為に除菌や消毒したい物が濡れているとその水分が混ざってしまってアルコール濃度が下がる事により効果が著しく落ちてしまいます。

アルコールの仕組みが分かっていればなるほどと思う事ですが、知らない人もたくさんいますので特にまな板や包丁、食器やシンクなどの水回りの除菌消毒時や手を消毒する時にアルコール剤を使用する時は注意しましょう。

アルコール剤の使い方

 

アルコール剤を使用する際は濃度低下により効果が薄まってしまうので濡れている物は必ず十分に乾かしてから使用するという事を忘れないでください。

それから手などの人体に使用する場合は必ず医薬品もしくは医薬部外品のアルコール剤を使用しましょう。医薬品や医薬部外品以外のアルコール剤がたくさん販売されていますが、薬事法により人体への消毒目的での使用は医薬品もしくは医薬部外品以外認められていません(人体以外の物に関しては問題ありません)。

手の消毒などにアルコール手指消毒液(ヒビスコールSHやウエルパス手指消毒液0.2%)を使用する場合は手をしっかり乾かした後に適量を手に受け手指消毒液が十分に乾くまで丁寧に擦り込みましょう。

>>手指消毒手順|Medical SARAYA

生肉や魚を切った後のまな板や包丁に使用する場合は洗剤でしっかり洗浄した後、十分に乾かしてからアルコールをスプレーします。意外と忘れがちなのが包丁の柄やまな板の裏側ですので注意しましょう。

食器や弁当を詰める前の弁当箱の除菌や消毒にもアルコール剤は役に立ちます。それぞれ洗剤でしっかり洗ってから十分に乾かした後アルコール剤を使用しましょう。

アルコール剤は除菌や消毒以外でも汚れをよく落とすので掃除にも重宝します。皮脂汚れやタバコのヤニなどもよく落ちるので除菌や消毒目的ではなく掃除に使用する人もたくさんいます。アルコール剤は蒸発が早く二度拭きの必要がない点が使いやすいです。

注意する事

 

・原液又は濃厚液は刺激作用があるので経口投与しない事。

・眼に入らないように注意する事。眼に入った場合は水でよく洗い流す事。

・広範囲又は長時間使用する場合には蒸気の吸入に注意する事。

・同一部位に反復使用した場合には脱脂などによる皮膚荒れを起こす事があるので注意する事。

・引火性がある為、火気使用時には十分注意する事。

・合成ゴム製品、合成樹脂製品、光学器具、鏡器具、塗装などの中には変質する物もあるので注意する事。

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